はじめに
自動車メーカーは安定した需要とグローバル展開を背景に、魅力的な投資先として注目を集めています。国内外で広く事業を展開する大手メーカーは、為替や関税、景気動向に左右されやすい一方で、安定配当と成長の両立を目指す姿勢を打ち出しています。
本記事では、自動車メーカー8社を比較し、特に投資妙味が大きい3銘柄をピックアップしてご紹介します。
自動車業界の現在
2025年、自動車業界は「トランプ関税」の影響を強く受けています。米国市場への依存度が高いメーカーは輸出コストの増加に直面し、業績予測にも下方修正が見られる状況です。
しかし一方で、各社は米国現地での生産拠点拡充や新興国市場での需要取り込みに動いており、長期的には収益基盤の安定化が期待されます。
EV・ハイブリッド車や次世代技術への投資も進んでおり、逆風を乗り越えて中期的な成長軌道に回帰できるかが大きな焦点です。
自動車メーカー比較一覧表(2025年9月5日終値ベース)
国内自動車メーカー銘柄の8社を並べました。上から時価総額の多い順です。
コード | 銘柄名 | 配当 利回り |
PER | PBR | 連続増配 年数 |
連続非減配 年数 |
年間平均増配率 (CAGR) |
時価総額 (億円) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
7203 | トヨタ自動車 | 3.27% | 14.2倍 | 1.05倍 | 3年 | 15年以上 | 約 8.2% | 464,689 |
7267 | 本田技研工業 | 4.18% | 16.7倍 | 0.58倍 | 0年 | 15年以上 | 約 8.7% | 89,100 |
7269 | スズキ | 2.25% | 12.1倍 | 1.29倍 | 6年 | 15年以上 | 約 19.3% | 39,547 |
7270 | SUBARU | 3.82% | 13.8倍 | 0.82倍 | 3年 | 4年 | 約 5.4% | 22,505 |
7202 | いすゞ自動車 | 4.62% | 10.9倍 | 1.03倍 | 3年 | 4年 | 約 11.8% | 14,274 |
7201 | 日産自動車 | (無配) | — | 0.25倍 | (無配) | (無配) | (無配) | 12,758 |
7261 | マツダ | 5.19% | 33.4倍 | 0.39倍 | 0年 | 0年 | 約 18.4% | 6,886 |
7211 | 三菱自動車工業 | 2.40% | 55.7倍 | 0.64倍 | 2年 | 3年 | 約 -0.6% | 6,102 |
ピックアップ銘柄
自動車メーカー8銘柄の中から、高配当株投資として購入候補となる3銘柄をピックアップしてご紹介します。
1. トヨタ自動車(7203)
事業内容と特徴
世界最大の自動車メーカーであり、グローバル販売シェアは1位。乗用車から商用車まで幅広く展開しています。
生産拠点は北米・欧州・アジアなど世界各地に分散されており、米国ケンタッキー工場は年産約55万台規模、北米全体では年産110万台超の生産能力を持ちます。
この強固な現地生産体制により、米国関税リスクを相対的に低減できる点が強みです。
EV・ハイブリッド車(HV)のラインアップも拡充しており、長期的な収益安定の柱として機能しています。
今期の通期業績予測
トヨタ自動車の2026年3月期(2025年4月~2026年3月)の連結業績予想は以下のとおりです。
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売上高(営業収益):48兆5,000億円(前期比+1.0%)
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営業利益:3兆8,000億円(同 −20.8%)
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税引前利益:4兆4,100億円(同 −31.2%)
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当期純利益:3兆1,000億円(同 −34.9%)
投資指標(2025年9月5日終値ベース)
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配当利回り:3.27%
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PER:14.2倍
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PBR:1.05倍
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ROE:13.59%
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自己資本比率:38.4%
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配当性向:25.0%
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連続増配年数:3年
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連続非減配年数:15年以上
株主還元方針
トヨタは、「安定的かつ継続的な配当の実施」を基本方針とし、業績や将来成長に必要な投資とのバランスを保ちながら配当を柔軟に決定しています。
また、自己株式取得を機動的に活用することを明記しており、財務の健全性を維持しつつ株主還元を強化する姿勢を示しています。

世界首位メーカーの安定感は抜群。高い現地生産比率で関税リスクを抑えつつ、成長投資と還元を両立。長期投資を前提として、NISAで購入してもよい優良銘柄のひとつです!
2. 本田技研工業(7267)
事業内容と特徴
自動車・二輪車・パワープロダクツを柱とする総合メーカー。二輪車は世界シェアNo.1で、グローバルに圧倒的な存在感を持っています。
特に米国は最大の収益源であり、北米での自動車販売比率は全体の約45%前後を占めます。
また、米国現地には年間約120万台規模の生産能力(オハイオ・アラバマ・インディアナ・カナダ工場など)が整備されており、米国関税リスクの影響を軽減できる体制を確立しています。
EV・水素など新技術への投資も加速中で、中長期的な成長が期待されます。
今期の通期業績予測
ホンダの2026年3月期(通期)における連結業績予想は以下のとおりです。
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売上高:21兆1,000億円(前期比+3.9%)
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営業利益:7,000億円(同 +40.0%)
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税引前利益:7,100億円(同 +44.9%)
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当期純利益:4,200億円(同 +68.0%)
投資指標(2025年9月5日終値ベース)
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配当利回り:4.18%
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PER:16.7倍
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PBR:0.58倍
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ROE:6.68%
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自己資本比率:40.1%
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配当性向:38.0%
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連続増配年数:0年
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連続非減配年数:15年以上
株主還元方針
ホンダは、「連結配当性向30%を目安に、安定的かつ継続的に配当を実施する」ことを公式に表明しています。
さらに、自己株式取得を機動的に行う方針を掲げており、2026年3月期以降はDOE(配当基準指標)を導入、約3.0%を目安に運用することを明示しています。

15年以上にわたり安定配当を継続してきた信頼感が強み。二輪の世界首位と米国での現地生産が収益を支え、今後の増配余地にも期待が持てる堅実な銘柄です!
3. いすゞ自動車(7202)
事業内容と特徴
商用車・ディーゼルエンジンに強みを持ち、アジアや新興国で堅実な販売実績を誇ります。
北米向けについては、藤沢工場から米国へ輸出されるトラックが年間約20,000台ある一方、いすゞは米国内に2030年までに年産50,000台規模の組立工場をサウスカロライナ州に建設中です。これにより、関税の直接的影響を低減することが見込まれます。
海外販売の拡大が収益を押し上げており、北米工場の新設計画とあわせて今後の安定成長が期待されます。
今期の通期業績予測
いすゞの2026年3月期(通期)における業績予想は以下のとおりです。
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売上高:3兆3,000億円(前年同期比 +2.0%)
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営業利益:2,100億円(同 −8.5%)
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経常利益:2,200億円(同 −10.2%)
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当期純利益:1,300億円(同 −7.2%)
投資指標(2025年9月5日終値ベース)
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配当利回り:4.62%
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PER:10.9倍
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PBR:1.03倍
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ROE:10.17%
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自己資本比率:41.6%
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配当性向:48.2%
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連続増配年数:3年
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連続非減配年数:4年
株主還元方針
いすゞは、「配当性向40%を目安に維持」することを株主還元方針として掲げています。
また、適正な自己資本水準を意識しつつ、機動的な自己株式取得を継続すると明言しており、安定配当と資本効率向上の両立を重視しています。

商用車需要の底堅さに支えられ、安定配当と成長の両面で魅力大。北米工場新設で関税リスク低減にも布石。高配当株として手堅さが光ります。
まとめ
自動車メーカー各社は、グローバル販売や為替の影響、関税リスクに直面しながらも、株主還元姿勢は大きく前進しています。
その中で特に注目したいのが トヨタ、ホンダ、いすゞ の3社。
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トヨタは「安定感と成長性」
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ホンダは「再増配余地」
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いすゞは「高配当と成長のバランス」
今後の為替や関税の動向によっては、今期業績予測の「上方修正」も期待できます。投資判断の参考にする際には、各社の海外生産比率や米国関税リスクへの対応力も考慮すると、より安心して長期ポートフォリオに組み込むことができると思います。
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